「ずむ・ずむ・りずむ リズムであそぶピアノブック」 [ピアノ教本]
春畑セロリ先生が、5冊に及ぶ「できるかな ひけるかな」という新シリーズをリリース。
今回は1冊目の、「ずむ・ずむ・りずむ リズムであそぶピアノブック」をご紹介いたします。
「リズム」に特化した教材で、タイトル通り、リズムで遊ぶことをコンセプトにしています。
ゲーム感覚でいろいろなリズムを体験します。
主にピアノ伴奏について、手拍子や体を叩いたり、動かしたりすることで様々なリズムに触れます。
本書で登場するキャラクターは、トロッポロ星に住むという設定の「ずむずむ」という動物。
ピアノ伴奏をする先生は「みゅるみゅるちゃん」という女の子の役をやりながら、子ども達とリズムで遊ぶ。
そんな流れになっています。
最初は単純な4分音符のリズムから始まり、3拍子や裏拍、シンコペーション、5連符、2拍3連、付点のリズム…などさまざまなリズムを体験していきます。
手をたたくことがメインになりますが、
「ちょびっとステップ・アップ」
というコーナーで、ピアノで弾いたり拍子を変えたりと、さらに学びを発展させることができます。
気づくのは「言葉」はリズムの基本で、そこから入るのが、子ども達がスムーズに学べる近道だということです。
この教材では身近な言葉(はち、みみずなど)とリズムを対応、さらにピアノ伴奏によって楽しく学べます。
教材の終わりの方では、これまでに体験したリズムを応用するかのように、
「ロック」「マンボ」「ボサノバ」「タンゴ」「サルサ」
などの曲が掲載されています。
これまで、こうしたリズムに特化した教材は、あまりなかったように思います。
また、小さいうちから様々なリズムに触れることは、きっとピアノの学習にもいい影響を与えるでしょうね。
★今日の一冊
「ずむ・ずむ・りずむ リズムであそぶピアノブック」春畑セロリ・著
ひとつの区切りにあらためてピアノレッスンを考える [ピアノレッスン]
人は職場で成長する、と言います。
ピアノの先生の場合、外部講師として務めていた現場で学ぶことは少なくありません。
これは私自身、心から感じています。
先日、9年間お世話になった教室を退職いたしました。
ドイツ留学を終え、まったく仕事がない状況で途方に暮れていた頃、採用が決まった時は感謝の気持ちしかありませんでした。
はじめての生徒さんは、3歳の女の子。
小さい子と向き合うこと自体、初めての経験。戸惑うことも少なくありませんでした。
自分の音楽を追い求めて、作曲家の思想、世界観、精神性に一歩でも近づこうともがいていた留学時代。
そこにある孤独な世界と打って変わって、小さい子どもたちと向き合う世界。
そのギャップも新鮮でした。
9年も教えていると、生徒さんとの思い出もたくさんありますが、それ以上に、彼ら彼女たちから学ばせていただいたことは数限りなくあります。
「教えることは、教わること」
まさにその通りだと思います。
「伝わらないのは、伝え方が悪いから」
「こっちを向かないのは、そこに足りない何かがあるから」
「夢を語らないのは、引き出し方がよくないから」
多くの場面に遭遇しながら、「ならばどうする?」と考え続けたことは、意味のある時間だったと振り返ります。
受付の方も素敵な方ばかりで、たくさん助けてくださいました。
特に、教室にいた2年前の震災の日には、本当にお世話をいただきました。
私が幸運だったのは、どの生徒さんもいい子で、どの保護者の方も素敵な方ばかりだったこと。
最後のレッスンの日に、どの保護者の方も、「残念です」とおっしゃってくださったことが、救いでした。
初めてきた3歳の女の子も、中学1年生。
別れのときの握手。9年前の初めてのレッスンで握った、小さい手を、思い出しました。
こちらの教室でのレッスンは、ひとつの区切りとなりましたが、レッスンはこれからも続きます。
感謝の気持ちを抱きながら、今いる生徒さん、そして未来の生徒さんと、真摯に向き合っていくだけです。
「生徒に伝えたいピアニストの言葉」 [書評]
先日読んだ本に、「生徒に伝えたいピアニストの言葉」檜山乃武・角田珠実・編著があります。
著者は、ベストセラーとなった「音楽家の名言1~3」の檜山乃武さんと音楽ライターの角田珠実さん。
この「名言」シリーズの最新刊とも言える、ピアニストの言葉をまとめた書籍です。
「すべてのピアノを学ぶ人へ贈る テクニックと演奏表現のための“気づきの言葉”」
と 書籍の帯にあるこの書籍は、4章から成り立っています。
【Part1】ピアノを上達させる言葉
【Part2】やる気にさせてくれる言葉
【Part3】弾く前に知っておきたい名作曲家への言葉
【Part4】あこがれのコンクールを知ること
各ページに「名言」が書かれ、それに付随して、詳しい解説を施す、というパターンで構成されています。
今回の書籍は、世界の巨匠ピアニストから、現在活躍している日本のピアニストまで、ピアノや音楽、そして作曲家について、独自の世界観を幅広く紹介しています。
「何を練習したかではなく、いかに練習したかが重要である(バックハウス)」
「音の質というのは、耳でしか学びようがないのです(イヴ・アンリ)」
ピアニストならではの言葉に、ハッとさせられることも少なくありません。
個人的には、紹介されている「言葉」を、まずは自分のものに「消化」し生徒に伝えていきたい。
そのためにも何より「自分自身が精進し続けること」が根底になければならない、と自戒しました。
文章でもピアノでも、何かを表現し伝えるためには、そこに裏付けとなる果てしない「学び」が必要。
どの仕事も、突き詰めると「人間性」にまで関わってくる。だからこそ、生きる上で「学び」が必要最低条件なのでしょう。
何かを伝えるということは、結局は、
「自分の生き方を伝える」
ことなのだろうと、あらためて感じます。
★今日の一冊
「生徒に伝えたいピアニストの言葉」(ヤマハミュージックメディア)
食事は音楽で味が変わる? [その他世の中について]
時間がないときによく立ち寄る、駅のおそば屋さんがあります。
割と美味しいおそば屋さんで、これまでずっと、ジャズがBGMで流れていました。
そんなある日、突然、知らないピアノ曲がエンドレスで流れるようになりました。
素敵な曲ならいいのですが、残念なことにまったく面白みのない曲…。
エンドレスで流れるので、10分の間に5回も聴かされることになります。
味は変わっていないはずなのに、何だか感じ方も変わってくるようです。
大変だと思うのは、従業員の方。音楽が労働に及ぼす影響は少なくないはずです。
前のように有線に戻してくれたら、素敵なおそばタイムを楽しめるのに…と思う今日この頃です(笑)
「今日が残りの人生の、最初の一日」 [その他世の中について]
おかげさまで、昨日誕生日を迎えました。
たくさんの方から、お祝いのコメントをいただき、一つひとつを感激しながら拝読いたしました。
本当にありがとうございます。
たくさんの方々に支えていただきながら、活動ができていること
遠く離れていても、心の距離はとても近いこと
人の心のあたたかさほど、胸に沁みるものはないこと
そんなことを感じながら、感謝の気持ちに包まれた一日でした。
いただいたお気持ちを大切に、
「今日が残りの人生の、最初の一日」
と感じながら、毎日を過ごしていきたいと思います。
ありがとうございました。
だから人は一生懸命になれる [ピアノレッスン]
新学期が始まりましたね。
東京では一足早い桜が咲き、新緑の季節を迎えるかのようでした。
この春、転勤のために海外にいってしまう女の子。
「むこうに行ってもピアノはぜったいがんばります。とう先生にならった3年間、忘れません」
一字一字、丁寧に書いてくれたその字を見ながら、一緒に学んだ日々に感謝しました。
思えば、いろいろ教えてくれたのは自分のほうだったのかもしれません。
彼女のおかげで、これまでにないレッスンを考える日々をいただいた。
彼女のおかげで、どう話せば伝わるのかを懸命に考えた。
彼女のおかげで、自分に足りないものは何かに気づくことができた。
「教えることは教わること」
ピアノ教育も、子育ても、努力したことは最後には「自分」のためになる。
一生懸命になれる人は、そのことを知っているのかもしれません。
「ピアノ嫌いにさせないレッスン」船越清佳・著 [書評]
最近では、ピアノレッスンの関連書籍が多数出版されていますね。
先日読んだのは、「ピアノ嫌いにさせないレッスン 船越清佳・著」という書籍。
書籍の帯には、「生徒が苦しまずに続けられるレッスン法」とあります。
パリの市立音楽院でピアノ指導をしている著者。
フランスでのピアノ教育の実例を交えながら、これからのピアノレッスンのあり方を考えています。
巻頭には、パリ地方音楽院の院長によるインタビューがあり、フランスのピアノ教育事情や、教育観が語られて興味深いです。
内容は以下の通りです。
第1章:一生ピアノと関わり続けるフランスのピアニストたち
第2章:生徒とともに進めるレッスン
第3章:"意味"を考える練習法
第4章:先生として進化する
第5章:21世紀の音楽教育
巻末には、「レベル・タイプ別レパートリーリスト」が掲載されています。
あまり目にすることのない曲も挙がっていて、興味深い選曲になっています。
特徴として、フランスのピアノ教育を紹介しつつ、これからのレッスンを考える点が挙げられます。
フランス語の「弾く:jouer」には「遊ぶ」という意味もある、とあります。
私もドイツ留学時代に感じたことですが、彼らにとってピアノを弾くことは、やはり「楽しむこと」である、ということです。
例えば友だちに「これから練習するんだ」と言うと、必ず「viel Spass!(楽しんで!)」と声をかけてくれます。
やはり欧米人には「楽しみたい思い」が根底にあり、ピアノにおいてもこれは変わらないと実感しました。
この点は日本のピアノレッスンでも大切にすべき考え方の一つではないかと思います。
本書の詳しい内容はお読みいただくとして、私がなるほどと思ったことをいくつか。
「先生は、生徒に美しい音色のイメージを与える存在でなければなりません」
「レッスンは、一緒に考えて、一緒に問題解決をする場」
「(右手より左手が下手だと)うまいソリストが下手な伴奏者に足を引っ張られているようなもの」
「音価によってタッチを変える(細かい音になるほどタッチは軽くなっていく」
第3章は、実際のレッスンで使える内容がたくさんあります。
特に、「正しいイメージを与える」のところでは、生徒にどう説明すれば分かりやすいかを解説。
これは実際の現場で役立ちそうです。
ピアノ指導を仕事にしている方には、現場で生かせる何らかの気づきが得られる一冊ではないかと思います。
★今日の一冊
「ピアノ嫌いにさせないレッスン 船越清佳・著」(ヤマハミュージックメディア)
「あなたがピアノを教えるべき11の理由(飯田有抄・構成・解説)」 [書評]
以前、「あなたがピアノを続けるべき11の理由」という書籍をご紹介いたしました。
先日、この続編とも言える本が出ました。
「あなたがピアノを教えるべき11の理由(飯田有抄・構成・解説)」。
前書が、ピアノを弾く・学ぶ人への提言でしたが、今回はピアノ指導者への提言としての一冊です。
「はじめに」にもあるように、
「『ピアノを教える』という教育活動をあらためて考える」
「どのような意義があり、何が求められているのか」
をテーマとして、「ピアノを教えることの意味」を考えるものとなっています。
今回も、ピアノ指導者やピアニストはもちろんのこと、幅広い分野での第一人者が寄稿しています。
なかでも、生物学者の福岡伸一さん、公文の三宅良寛さん、などは、およそピアノとは関係ない人物。
けれども多くの場合、新しい知見はおよそ分野の違う人の視点から生まれるもの。
今回の人選も、おそらくそうした意図で、行われたのでしょう。
11人の専門家が考える、「ピアノを教えるべき理由」。
具体的な内容はお読みいただくとして、個人的には、
「生物と無生物のあいだ」で有名な、福岡伸一さんの、
「教育の目的とは、この『センス・オブ・ワンダー』の『ありか』を子供たちに伝えること」
ピアニストの舘野泉さんの、
「本を読むことも遊ぶことも、私にとってはピアノから遠いものではなく、すべてが一つにつながっている」
吹奏楽指導者の石田修一さんの、
「たった一つの音をポンと鳴らすだけでも、そこには千の表情をつけることができる」
「幸せとは、人に感謝し、人のために自分が何かをしてあげられること」
公文公教育研究所社長の三宅良寛さんの、
「指導者は自分自身が学び続ける存在であるべき」
などは、ピアノ指導者として大切なマインドとして、心に残りました。
文量はそれほど多くありませんが、あらためて「指導者とは?」を考えるきっかけとなりました。
欲を言えば、もう少し、音楽やピアノ業界ではない、全く違う分野の方のお話もあれば、と言うところですね。
いずれにせよ、今ピアノを教えている人、これから教えようと思っている人には、心に残るフレーズがたくさんある。
そんな一冊ではないかと感じました。
★今日の一冊
「あなたがピアノを教えるべき11の理由(飯田有抄・構成・解説)」ヤマハミュージックメディア
一足早い、桜の開花のような、嬉しい連絡 [ピアノレッスン]
先日、「音大に合格しました!」という連絡がきました。
以前、レッスンをさせていただいていた子で、夢もエネルギーもある子です。
口にする夢や目標を、次々と実現させていくので、こちらも見ていて気持ちがいいくらいです。
ただ、その裏にはおそらく想像できないほどの努力があるはず。
きっと悔しい涙を流したこともあるでしょう。
それを見せないところ、そして決めた道をどんどん進んでいく姿。
このあたりは、こちらも啓発される部分が少なくありません。
これから始まる新しい生活で、同じように辛いこともあるかもしれません。
けれども、おそらく大丈夫でしょう。
なぜなら、それを越えたところに、「人生で大切なもの」が待っている、と知っているでしょうから。
一足早い、桜の開花のような、嬉しい連絡でした。
これからの音楽出版についての勉強会 [音楽]
先日、これからの音楽出版についての勉強会に参加してきました。
会場は、懇意にさせていただいている深見友紀子先生のご自宅。
ご参加は15名ほどで、出版関係の方やミュージシャン、ウェブデザイナさんなど、幅広いジャンルの方々がいらっしゃっていました。
楽譜の電子化やこれからの音楽出版のあり方、出版界の現状など多くの学びがありました。
個人的には、楽譜はやはり紙で持っていたいほうです。
けれども、これからは「楽譜のあり方そのもの」が、もしかして変わっていく可能性もありますね。
いずれにせよ、音楽は普遍なわけですし、
「自分がどう楽譜と関わっていくか」
のスタンスを明確にしておくことは、音楽をする者、あるいは伝えていく者として、必要不可欠になってきている。
そう自覚していくことが重要なのでは、とあらためて感じました。
貴重な学びの場をご提供くださった深見先生、たくさんの情報をいただいたご参加の皆様に心から感謝いたしております。
ありがとうございました。