「ピアノ嫌いにさせないレッスン」船越清佳・著 [書評]
最近では、ピアノレッスンの関連書籍が多数出版されていますね。
先日読んだのは、「ピアノ嫌いにさせないレッスン 船越清佳・著」という書籍。
書籍の帯には、「生徒が苦しまずに続けられるレッスン法」とあります。
パリの市立音楽院でピアノ指導をしている著者。
フランスでのピアノ教育の実例を交えながら、これからのピアノレッスンのあり方を考えています。
巻頭には、パリ地方音楽院の院長によるインタビューがあり、フランスのピアノ教育事情や、教育観が語られて興味深いです。
内容は以下の通りです。
第1章:一生ピアノと関わり続けるフランスのピアニストたち
第2章:生徒とともに進めるレッスン
第3章:"意味"を考える練習法
第4章:先生として進化する
第5章:21世紀の音楽教育
巻末には、「レベル・タイプ別レパートリーリスト」が掲載されています。
あまり目にすることのない曲も挙がっていて、興味深い選曲になっています。
特徴として、フランスのピアノ教育を紹介しつつ、これからのレッスンを考える点が挙げられます。
フランス語の「弾く:jouer」には「遊ぶ」という意味もある、とあります。
私もドイツ留学時代に感じたことですが、彼らにとってピアノを弾くことは、やはり「楽しむこと」である、ということです。
例えば友だちに「これから練習するんだ」と言うと、必ず「viel Spass!(楽しんで!)」と声をかけてくれます。
やはり欧米人には「楽しみたい思い」が根底にあり、ピアノにおいてもこれは変わらないと実感しました。
この点は日本のピアノレッスンでも大切にすべき考え方の一つではないかと思います。
本書の詳しい内容はお読みいただくとして、私がなるほどと思ったことをいくつか。
「先生は、生徒に美しい音色のイメージを与える存在でなければなりません」
「レッスンは、一緒に考えて、一緒に問題解決をする場」
「(右手より左手が下手だと)うまいソリストが下手な伴奏者に足を引っ張られているようなもの」
「音価によってタッチを変える(細かい音になるほどタッチは軽くなっていく」
第3章は、実際のレッスンで使える内容がたくさんあります。
特に、「正しいイメージを与える」のところでは、生徒にどう説明すれば分かりやすいかを解説。
これは実際の現場で役立ちそうです。
ピアノ指導を仕事にしている方には、現場で生かせる何らかの気づきが得られる一冊ではないかと思います。
★今日の一冊
「ピアノ嫌いにさせないレッスン 船越清佳・著」(ヤマハミュージックメディア)
藤拓弘先生
ブログで拙著を取り上げて下さっているのを拝見し、御礼を申し上げたく思いました。ありがとうございます。
ご指摘の通り、名門パリ地方音楽院(日本人留学生も現在100人ほど在籍しているということです)の院長が、冒頭のインタヴューでフランス人らしいヒューマニティーに溢れた新鮮な教育哲学を展開してくださいました。
また内容に対しても、生徒が自分で音楽に対して考える力を身につけることが、音楽を愛する心につながる、そのためにはレッスンの構成も生徒にとって明快であるよう心がける、といった私の意図を的確に汲んでご紹介くださいまして、本当に感謝しております。
最後になりましたが、藤先生の革新的な御著書をいくつか拝見致しております。いつかセミナーなどで藤先生のお考えに接することができれば幸せです。
by 船越清佳 (2013-03-25 01:16)
コメント
by お名前(必須) (2013-04-06 10:57)
船越先生、はじめまして。
この度はコメントをいただき、ありがとうございます。
また、こうした価値ある書籍を我々にご提供くださり、ありがとうございます。
ご活躍をいつもお祈りしております。いつかお会いできますことを楽しみにしております。
ありがとうございます。
by lila (2013-10-22 14:59)