轟千尋先生の「いちばん親切な楽典入門」 [書評]
ピアノ教育業界で、今最も人気のある作曲家、轟千尋先生が、新刊を出されました。
「いちばん親切な楽典入門(新星出版社)」です。
巻頭の「はじめに」から引用すると、
「この本は、楽譜の本当の読み方を解説した本です」
「プロの演奏が素敵に聴こえるのは、ずばり、楽譜の本当の読み方を知っているから」
また、「この本の使い方」から引用すると、
「この本では、音の高さ・長さ、曲のノリ・つくり・表情・裏側の順に、楽譜の本当の読み方を学んでいきます」
「楽譜のルールがわかるだけでなく、演奏が素敵になって、鑑賞がよりおもしろくなる楽譜の読み方をわかりやすく解説」」
この本には付属のCDがあり、冒頭には轟先生ご自身の声で、この本についてお話されています。
「楽譜を読むこと、それはとっても楽しくてスリルがあって、ワクワクすることだと私は考えています」
また、このCDの演奏は、轟先生ご自身によるもので、素敵なピアノ演奏も聴くことができます。
(Track65の「目をとじて」は素敵な曲ですね)
進め方としては、まずは楽典の知識を分かりやすく解説。その後「チャレンジ」という練習問題や「特訓!」というコーナーで、習熟度を高めます。
この本のタイトルに「いちばん親切な」とあるように、難しいイメージのある楽典を、分かりやすく解説しています。
難しい言葉を使わず、丁寧に解説している点、親しみやすいイラストなど、読みやすい配慮があります。
といっても、音楽の専門家やピアノの先生が読んでも勉強になるレベルの話も少なくありません。
たとえば、各所にある「作曲家のはなし」では、なるほどと思う話が散りばめられています。
轟先生もおっしゃっていますが、音楽で大切なのは「耳」であり、感じる心、ではないかと思います。
けれども、そのためにはある程度の知識は必要です。
私も以前、テレビでアメフトをやっているのを見て、まったくその面白さが分かりませんでした。
なぜなら、アメフトを「鑑賞して楽しむ」ための知識やルールを分かっていなかったから。
それが分かってからは、世界が変わったかのように、このスポーツの面白さが理解できるようになりました。
これと同じで、音楽も「聴いて」「感じる」ためには、ある程度の知識やルールを知っておく必要がある。
そのために楽典があり、本書は「見て」「読んで」、そして「聴いて」学ぶことができます。
しかもその知識は、素敵な演奏にまで昇華できる。
音楽に興味のある生徒に、まず最初に渡す楽典の本、として、これから活用される先生も増えるでしょう。
★今日の一冊
「いちばん親切な楽典入門(新星出版社)」
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