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「ドビュッシーと歩くパリ」中井正子・著 [書評]




ヨーロッパでの音楽留学の醍醐味として、学びながら様々な国を訪れることができることが挙げられると思います。


ヨーロッパは地続きで、交通網も発達しているので、時間とお金に余裕があれば、どこにでも行くことができます。



私もドイツに留学していたときに、友人でピアニストの山口雅敏さんを訪ねて、パリに行ったことがあります。


肌が痛くなる、40度を超える真夏でしたが、彼は私にとっての初めてのパリを、ポイントを絞って、見事に案内してくれました。



先日読んだ本に、中井正子先生の「ドビュッシーと歩くパリ(アルテスパブリッシング)」があります。



中井正子先生といえば、ドビュッシーのピアノ作品の全曲演奏会や全集CD録音、全曲実用版楽譜校訂などで、ドビュッシー演奏の第一人者として知られるピアニスト。


その中井先生が、ピアニストの視点でパリを案内してくれるのがこの書籍です。


ドビュッシーは今年生誕150年を迎えたフランスの作曲家。「月の光」などは、CMなどでもよく流れているのでご存じの方も多いでしょう。


そうしたドビュッシーゆかりの地を、作品の解説や写真で彩りながらガイドしてくれています。



「彼の人生や音楽を一緒に体験する楽しみを味わっていただきたい」


と「はじめに」にもあるように、ドビュッシーの生涯や暮らしぶり、作品の背景などが、パリの街とリンクして味わうことができます。


中井先生の留学時代のお話も含め、あたかも一緒に歩き、お話を伺いながら、パリの街を散策しているかのような、そんな気分になります。



初めてパリで、モンマルトルの丘やルーヴル美術館、旧オペラ座を訪れたときの、あの感覚が甦ってきます。そうした情景や空気感まで伝わってくる文章は素晴らしいです。


また、「こういうところでゆっくり読書したいな」と思わせるような、パリの街の写真がいいですね。



駅で、改札を通らず乗り越えていく若者を唖然として見た経験がありますが、この本にあった、カルネ(交通チケット)を買うくだりの「アンタラネ・シモブクレ」には笑いました。



この書籍には、自身の演奏によるCDも付属されていて、これを流しながら読んだり、写真を眺めているだけで、パリを歩いているような気分になれます。


柔らかくもシャープな中井先生の演奏、選りすぐりの19曲の名曲で、ドビュッシーのピアノの世界を堪能しました。



あらためて、ドビュッシーの素晴らしさ、そしてパリの良さを感じることができる、そんな一冊でした。



今度パリに行ける日はいつになるだろう。今度は哀愁ただよう秋に、訪れてみたいものです。






★今日の一冊
「ドビュッシーと歩くパリ 中井正子・著」(アルテスパブリッシング)








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