青柳いづみこさんの「我が偏愛のピアニスト」 [アーティスト]
日本には素晴らしいピアニストがたくさんいます。
けれども、本当に第一線で活躍できているピアニストは、ほんの一握り。
そんな舞台の光を浴び続ける一流のピアニストは、何を考え、どう生きている(きた)のか。
ピアノに関わる者なら誰でも、そうした部分に興味を持つものだと思います。
先日読んだ本に、青柳いづみこさんの「我が偏愛のピアニスト」(中央公論新社)があります。
この本は、第一線で活躍する日本人ピアニスト10人に、青柳さんがインタビューしたものがまとめられています。
ピアニストがピアニストにインタビューする、というシチュエーションもさることながら、そこから引き出された「音楽観」が、非常に興味深かったです。
何より素晴らしいのは、青柳さんの演奏評。
あたかも自分がそこにいるかのような、情景描写や演奏描写。そして音楽の描写。
一流のピアニストでありながら、これだけの文章をお書きになられる青柳さんには、本当に脱帽です。
10人のピアニストの方の言葉で、特に心に残ったものを、恐縮ながら引用させていただきたいと思います。
「私は音楽を弾いているのであって音を弾いているのではありません」(岡田博美さん)
「作曲家は(中略)全部の音を書いたのだから、ひとつひとつの音に意味があるんだ」(小川典子さん)
「響きの状態としては、私はお客さんのつくる空間が好きです」(小山実稚恵さん)
「演奏するっていうのは(中略)、魚をつかまえているみたいなもので、つかまえたと思ったらいない」
(坂上博子さん)
「芸術の中で生きていこうというときには、クリエイティヴィティーの欠如というのが一番危険」
(廻由美子さん)
「やってあげられないことはたくさんあるけれど、一緒に誰かいてよかったなと思ってもらえるぐらいのことはしたい」(花房晴美さん)
「ピアニストは自分のその場の気持ち、新しい感動がなければ演奏にならない」(柳川守さん)
「さまざまな楽器の特性を肌で知り、それをピアノに反映させる作業がおもしろくて仕方ないんです」
(藤井快哉さん)
「せねばならぬ、でピアノを弾くのはよろしくない」(海老彰子さん)
「本当に僕は、今まで教えた生徒たちに育てられてきたと思うんですよ」(練木繁夫さん)
引用文献:「我が偏愛のピアニスト」青柳いづみこ・著
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